趣味は読書。

漫画も小説も実用書も、最近読んだ書籍について一緒くたにメモしておくためのブログです。

三文未来の家庭訪問

ひとから「おすすめのマンガは?」と聴かれた時に言葉に詰まることが多い。いままでに5桁になる程度の漫画は読んでおり、好きな漫画が多すぎ、おそらくその時間だけでは語り尽くせないからだ。「そんなの適当に1つ選べばいいんだよ」となるのだろうけど、ことマンガについてはそんな気軽に選べないのだ。それだけ、ぼくのマンガに対する愛情は深いのだ。ただ、いっつも言葉に詰まるのも面白くはないので、このブログにメモとして残しておこうと思う。

最初のマンガ紹介は庄司創先生の短編集「三文未来の家庭訪問」。表題作の「三文未来の家庭訪問」をはじめとし、短編が合計3本掲載されている。どの作品も素晴らしいのだけど、四季大賞受賞作となった「三文未来の家庭訪問」は飛び抜けて好き。

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作品は「科学技術の飛躍」と「エネルギー問題の劇的な解決」により「人類が史上空前の豊かさを手に入れはじめた時代」を舞台としている。遺伝子操作をされて「子供を産める男」とされてしまった主人公。そして彼が無事に社会に出ていけるサポートをするための一種の狂言回しとしての家庭相談員による家庭訪問を軸に話が展開されていく。果たして彼は、新しい学校でも無事にやっていくことができるのだろうか?

と、こんなあらすじだけだと悲壮感があるのだけど、主人公の彼自身には悲壮感は全く無い。彼が片思い中の女性のお家がややこしかったりするものの、持ち前のコミュニケーション能力で根気強く渡って行くのである。このあたりは非常に人間ドラマにあふれているのだけど、根底にあるのは前述しているようなSFの設定。この読書感が非常に心地よい。サイエンス・フィクションを読んでいるというよりは、「少し、不思議」を読んでいる感覚に近い。短いページ数にこれだけの設定を盛り込んでもすっと入ってくる物語は、審査員の萩尾望都先生にして「プロでないのが不思議なくらいの完成度」と言わしめているほど。

藤子・F・不二雄先生の作品が好きな人だったら気に入っていただけるんじゃないかな。「少し、不思議」な新しい作品を読んでみたい方におすすめ!

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